ロックやフュージョン音楽などでも使われる 三味線 は世界的に有名です。弾ける人はあまり身近にいませんが、猫皮が使われているというのは有名な話です。しかし、その 猫 の皮をどうやって調達するのかなど知られていないことがたくさんあります。
三味線の皮は猫って本当?
三味線の素材と背景
各種楽器の歴史は古いです。三味線は日本の伝統楽器ですが、元になっている考えられる楽器がいくつかあります。
三味線は楽器分類学上ではギターやシタールなどと同じリュート属に分類されています。革を張った胴に棒状の長い棹を取り付けたリュート属の楽器は古代エジプトの壁画で既に見られます。
また、同じような楽器が古く中国から中東に伝えられて、後にペルシャでセタールになり、それが再度中国に入って三弦(サンシェン)になったと言われています。
三弦は当時交流があった琉球王国にもたらされて三線(サンシン)になり、後に三味線になったというのが一般的な説です。
三味線と同類とされる楽器のどれも基本的な仕組みは同じですが、形や素材が違います。その要因はさまざまです。
どのような形を美しいと考えるのかという文化的な背景、その楽器を弾く人種の一般的な体格に合う大きさや形に発展したこと、材料の入手に関する物理的要因などです。
今のようにさまざまな物の移動が簡単ではない時代に発達した伝統楽器に各地域で手に入れやすい素材が使われているのは当たり前のことです。日本の三味線の場合は、当時手に入れやすい皮の一つが猫だったということです。
三味線の皮は今も猫なのか
今はペットで猫を飼っている人が多いですから、「かわいそう」という声も聞かれますし、どうやって猫の皮を調達するのか不思議に思う人も多いです。実は、昔ながらに猫の皮が張られた三味線はたいへん高価で、現在ではあまり一般的ではありません。
昔に比べて猫の数が格段に減りましたし、猫と人間の関わり方も変わりましたから、猫の皮を手に入れるのは容易でなくなりました。そのようなわけで、主流なのは犬の皮です。
残念ながら国内の保健所で処分された犬の皮もありますが、中国や韓国、タイなどの東南アジアの国々で犬を食べる習慣がある国があります。そのような国からも犬の皮が入ってきます。
また、ここ数年は、初心者用の三味線は合成皮も多いです。そして、最近注目されているのがカンガルーの皮です。
カンガルーはオーストラリア特有の動物ですが、オーストラリアではカンガルーの数が増えすぎて生態系を崩さないようコントロールするために猟が行われています。カンガルーの皮はスポーツシューズにも活用されており、これからの研究の余地がある素材です。
猫皮と他の皮との音色の違い
使用される皮によって三味線の音色は違います。やはり伝統的な猫の皮は三味線独特の美しい響きがあります。猫の皮は薄いですし、犬の皮より毛穴も小さいですから、より繊細な音になります。
ですが、津軽三味線には犬皮が好んで使われます。猫より厚い犬の皮は音抜けが良く大きい音が出せるからです。
三味線は、長歌で使われる「細棹」、地唄や民謡で使われる「中棹」、津軽三味線や義太夫で使われる「太棹」の三つにわかれます。前述のように、猫の皮は貴重ですから、猫皮が使われるのはとても高級な細棹と地唄用の中棹ということになります。
ですから、犬の皮で比較的薄いものは細棹に使われます。太棹にはより厚い犬の皮が使われますが、猫皮の3〜4倍はあります。それから、胴に張られる一枚の皮でも厚さの違う部分があります。その厚さの差が大きいほどよく鳴ると言われています。
そして、ここにも三味線に猫の皮が適している理由が隠されています。胴のサイズの範囲内で厚さに差がでるようにするには一枚の皮が胴をちょうど包める大きさでなければなりません。牛や豚では大きすぎるということです。
以上のポイントを考慮すると、初心者用の三味線に使われる合成皮だといい響きがでないことがわかります。合成皮の技術はたいへん進歩していますが、動物皮の三味線と比べてみると音の違いはあきらかです。
今後の注目が集まるカンガルーの皮は音的には犬皮と同等と言われています。ただ、三味線の品質を左右するのは、皮などの素材だけではなく、それを組み立てる職人の技術にも大きく関わってきます。
カンガルーの皮はまだ試作段階ですので、それに適した皮をなめす技術や張る技術を研究する必要があります。猫に続いて、犬の皮もこれから少なくなっていくと言われていますから、検討の余地は大きいと考えられています。
まとめ
三味線の皮は猫って本当?
三味線の素材と背景
三味線の皮は今も猫なのか
猫皮と他の皮との音色の違い